古文敬語の代表格「たまふ」
(漢字だと「給ふ」「賜う」)
「たまふ」には尊敬語としての「たまふ」と謙譲語としての「たまふ」の2つがあり、
文中に現れると必ず問われる重要語となっています。
この記事では「たまふ」の訳し方と見分け方を世界一詳しく解説していきます!
記事の最後に見分け方早見表があります。
目次
尊敬語「たまふ」
活用表
尊敬の「たまふ」は四段活用です。
訳し方
①〈「与ふ」の尊敬語〉お与えになる
使ひに禄たまへりけり
訳:使いにほうびをお与えになった
身分が上の物が下の者に「物をお与えになる」の意です。
②〈尊敬の補助動詞〉お~になる、~なさる
一般動詞の後ろについてその動詞に尊敬の意味をお加えになります。
かぐや姫、いといたく泣きたまふ
訳:かぐや姫は、たいそうひどくお泣きになる
この用法の「たまふ」は敬語の中で最もよく使われる語です。
謙譲語「たまふ」
活用表
謙譲の「たまふ」は下二段活用です。
終止形と命令形はありません。
謙譲の「たまふ」とは言いますが、活用表に「たまふ」はありません。
↑ここ重要!
訳し方
〈謙譲の補助動詞〉~ております
一般動詞の後ろについて謙譲の意味を加えております。
他の謙譲の補助動詞の「~申し上げる」とはちょっと訳し方が違うとこに注意です。
今はこの世のことを思ひたまへねば
訳:今は現世のことを思っておりませんので
ここで、ちょっと難しい話をします。
補足ですので呼び飛ばしてしまっても構いません。
古文の謙譲語は現代文の謙譲語と性質が異なり「へりくだり」を表すことなく、尊敬の意を表します。
ごくまれに「へりくだり」を表す謙譲語も存在します。
それが「たまふ」です。
なので謙譲の「たまふ」は他の謙譲の補助動詞のように「~申し上げる」という訳ではなく「~ております」という訳になるのです。
これで悩まない!「給う」の見分け方
この二つの「たまふ」で重要なのは、文中にこの言葉が出てきたときにどっちの「たまふ」なのかということです。
ここからは、2つの「たまふ」の識別法を紹介します。
ここからが重要ですよ!
活用表から「たまへ」以外はわかる
ここで活用表をもう一度見てみましょう。
同じ形は「たまへ」だけなのです!
「たまは」「たまひ」「たまふ」と来たら尊敬の「たまふ」
「たまふる」「たまふれ」と来たら謙譲の「たまふ」
になります。
「たまへ」と来たら活用の形で判断する必要があります。
已然、命令形なら尊敬「たまへ」
未然、連用形なら謙譲「たまへ」です。
ここはしっかり覚えてください!
使われる場所
尊敬の「たまふ」は会話文にも地の文にも出てきますが謙譲の「たまふ」は会話文、手紙文にしか出てきません。
つまり、地の文に「たまふ」およびその活用が来たら100%尊敬の「たまふ」になります。
謙譲「たまふ」の特性
奈良時代以降使われる謙譲の「たまふ」には、補助動詞の用法しかありません。
つまり単体で謙譲の「たまふ」が使われることはありません。
必ず、一般動詞の後ろに置かれます。
「聞きたまへ」みたいに
また、謙譲の「たまふ」が補助する動詞は決まっていて
「思う」「見る」「聞く」「知る」の4つを補助することがほとんどです。
まとめ
ここまでの識別法をまとめるとこのようになります。
しっかり使い分けできるまで何度もこの表を見返して覚えちゃってください!
練習問題
ここまでに出てきた例文で練習してみましょう。
使ひに禄たまへりけり
答え
単体で使われているため尊敬「たまふ」と分かります。
かぐや姫、いといたく泣きたまふ
答え
「たまふ」は終止形。つまり、尊敬「たまふ」と分かります。
謙譲「たまふ」に終止形はないんでしたね。
今はこの世のことを思ひたまへねば
答え
打消しの助動詞「ず」の已然形「ね」が付いています。
ということは、この「たまへ」は未然形です。
つまり、謙譲「たまふ」と分かります。
最後に
「たまふ」は問題文中に出てくると、必ず問われるといっていい重要語です。
この識別は何度も確認して、必ずできるようにしてくださいね!