完了の助動詞「つ」「ぬ」は使用頻度が高く、訳にも直結するかなり重要な助動詞です。
この記事では完了なのか?強意なのか?
「つ・ぬ」の意味の取り方
打消しの「ぬ」と完了の「ぬ」の識別
断定の「に」と完了の「に」の識別
をすべて網羅した解説をしていきます。
この記事で完了の助動詞「つ」「ぬ」は完璧にしましょう!
目次
「つ」「ぬ」の活用表
まずは完了の助動詞「つ」「ぬ」の基本事項から確認していきましょう。
「つ」は下二段活用、「ぬ」はナ変活用になっています。
「つ」「ぬ」の接続
「つ」「ぬ」はどちらも連用形接続です。
つまり、「つ」「ぬ」の前に活用のある語(動詞、形容詞、形容動詞、助動詞)が来たらその活用は必ず連用形になります。
「つ」「ぬ」の意味、訳し方
「つ」「ぬ」には、3つの意味があります。「完了」「強意」「並列」です。1つずつ訳し方、意味の見分け方を確認していきましょう。
①完了「~(し)た」「~てしまった」
動作や状態の完了、終了を表します。
「つ・ぬ」が単体で使われたときはほとんどこの意味になります。
なよたけのかぐや姫とつけつ
訳:なよたけのかぐや姫と名をつけた
三河国八橋といふ所に至りぬ
訳:三河国の八橋という所に到着した
②強意「きっと~」「必ず~」
動作を強調します。
推量を強調して「きっと~だろう」と使われることが多いです。
潮みちぬ。風も吹きぬべし
訳:潮が満ちた。風もきっと吹くだろう
③並列「~(し)たり、(し)~たり」
船に乗つては降りつ、降りては乗つつ、
訳:船に乗っては降りたり、降りては乗ったり
浮きぬ沈みぬ揺られければ
訳:浮いたり沈んだりして揺られたので
並列は「~ぬ~ぬ」「~つ~つ」のように続けて使われることしかありません。
完了?強意?意味の見分け方
意味の見分け方①
強意の「つ・ぬ」は、下に推量の助動詞「む」や「べし」を伴うことが多い
風も吹きぬべし
訳:風もきっと吹くだろう
完了と違って強意は使われる場所が限られています。
「きっと~だろう」「必ず~しよう」のように強意は推量と相性がいいことを覚えておきましょう。
推量の助動詞まとめはこちら↓
意味の見分け方②
完了の「つ・ぬ」は下に過去・完了の助動詞「き」「けり」「たり」を伴うことが多い
「てき」「にき」「てけり」「にけり」「にたり」などの「つ・ぬ」はほとんどが完了の意です。
「にけり」「にたり」なんかはとてもよく目にします。
訳:この枝もあの枝も散ってしまった
打消し?完了?「ぬ」の識別
打消しの助動詞「ず」の連体形と
完了の助動詞「ぬ」の終止形はどちらも「ぬ」です。
ここはしっかり見分けなければ訳が全く違ってしまいます。
打消しの「ぬ」と完了の「ぬ」の見分けポイントは2つあります。
活用形と接続です。
・「ぬ」が連体形→打消しの「ぬ」
・「ぬ」が終止形→完了の「ぬ」
・未然形接続→打消しの「ぬ」
・連用形接続→完了の「ぬ」
この2つに着目すれば見分けられないことはほとんどありません。
練習問題
「風立ちぬ」の「ぬ」と文法的意味が同じもの選べ
①「世のためしにもなりぬべき御もてなしなり。」
②方違へに行きたるに、あるじせぬ所。
③「そよそよと音立てて、人過ぎぬなり。」
打消しの「ぬ」なのか完了の「ぬ」なのか
完了の「ぬ」なら、『完了』なのか『強意』なのかに着目してみましょう。
答えは③です。
例文「風立ちぬ」これは「立ち」が連用形ですので、連用形接続の完了の「ぬ」であることが分かります。
①の「ぬ」の後ろには終止形接続の「べき」が付いていますので、この「ぬ」は終止形であることがわかります。
終止形の「ぬ」は完了の「ぬ」でした。
そして、「べき」は推量の助動詞ですので意味は『強意』だと分かります。
②は名詞の「所」が後ろにありますのでこの「ぬ」は連体形であることが分かります。
連体形の「ぬ」は打消しの「ぬ」でした。
③番は「なり」の知識が必要になります。
文中に「音」という単語がありますのでこの「なり」は伝聞の「なり」であると考えます。
伝聞の「なり」は終止形接続ですので、この「ぬ」は完了。
意味も『完了』です。
「なり」の完全まとめはこちら↓
風が吹いた
①きっと世の話のタネになるだろうご寵愛である
②方違えに行ったときに、もてなしをしない所
③そよそよと音を立てて、人は通りすぎたようだ
方違へに行きたるに、あるじせぬ所。
「方違え」というのは陰陽道に基づく平安時代の風習です。
出かけるときに方角を占い、「凶方」と出た方角にはいかないもしくは一泊遠回りするという何とも面倒な風習です。
例えば北東が「凶方」だったら北に向かい一泊、それから東に向かうと言うものです。
時間に追われる現代人には理解できない風習ですね(笑)
ちなみに「あるじす」は「もてなす」という意味の重要語です。
断定?完了?「に」の識別
断定の助動詞「なり」の連用形と
完了の助動詞「ぬ」の連用形はどちらも「に」です。
どちらも連用形ですので注意しましょう。
断定の「に」と完了の「に」の見分けポイントは接続と訳し方です。
・体言・連体形接続→断定の「に」
・連用形接続→完了の「に」
体言、連用形接続の「に」は断定
連用形接続の「に」は完了です。
訳し方から見分ける
断定の意味で「に」が使われる場合は
実はたったの2パターンしかありません。
パターン①
「に」の真下もしくは2,3語下に
「あり」「はべり」「おはす」が来て、
かつ「に」自体が「で」と訳せるとき。
パターン②
「にて」「にして」の形で使われ、
かつ「であって」と訳せるとき。
詳しくはこちら↓
その他の「に」の識別はこちら↓
練習問題
下線部の助動詞は「完了」か「断定」か答えよ。
①おのが身は、この国の人にもあらず。
②今日まで逃げ来にけるは、
①断定 ②完了
①の「に」は名詞「人」の後ろにあることから連体形接続であることが分かります。
連体形接続の「に」は断定の「に」でした。
②の「に」は動詞「来」の後ろにあることから連用形接続であることが分かります。
連用形接続の「に」は完了の「に」です。
楽勝でしょう!
①私はこの国の人ではありません
②今日まで逃げてきたのは、
まとめ
さて、お疲れ様です。
今回は、完了の「つ」「ぬ」についてまとめました。
重要なのは ・完了なのか?強意なのか? ・打消しの「ぬ」と完了の「ぬ」の識別 ・断定の「に」と完了の「に」の識別
の3つでした。
ここで得た知識をぜひ実際に古文を読んで見ることで確認してみてください。
さあ知識が新しいうちに!
「明日やろうは馬鹿野郎」ですよ!
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